無月経(経閉) 生理がこない
概念
経閉とは「無月経」のことで、18歳を超えて月経が発来しないもの(原発性経閉)、あるいは月経が発来したのちに妊娠によらず3か月以上月経が停止するもの(継発性経閉)を指し、「停経」とも呼ばれる。生理的な経閉は、思春期以前・妊娠期・授乳期・絶経(閉経)後にみられる。ごくまれには「居経(3か月に1度の月経)」「避年(1年に1度の月経)「暗経(一生無月経)」といわれる妊娠が可能な経閉もある。本項では、主に機能失調による経閉で薬物治療が有効なものについて述べ、先天性の子宮欠損・膣欠損・処女膜閉鎖などの器質的な経閉は含めない。
弁証分型
@腎気虚の経閉
18歳を過ぎての無月経、あるいは初潮が遅く経血量が少なくて次第に無月経となり、白色帯下や腹満はみられず、腰背がだるく痛む・四肢が温まらない・頭のふらつき・耳鳴り・顔色が淡暗あるいは褐色のオ点がある・舌質は正常あるいは淡・脈は沈細で無力などを呈する。
鑑別分析
先天の腎気不足による衝任の空虚や、産後の出血過多による精血の消耗のために生じ、比較的重症である。
治法
温補腎陽・調理衝任
主な薬物
附子・肉桂・補骨脂・益智仁・仙茅・巴戟天・鹿茸・淫羊董などの補陽薬を主とし、熟地黄・当帰・拘相子・杜仲・山茱萸などの滋陰薬を加えます。
温腎通経湯 八味地黄丸合四神丸 月経が発来したのちは補腎養血湯を続服する。
A気血両虚の経閉
月経周期が延長し月経量が少なくて次第に無月経となり、下腹部の張った痛みgはともなわず、顔色が萎黄あるいは淡白・頭のふらつき・動悸・食欲不振・泥状便・顔のむくみ・四肢の浮腫・元気がない・無力感・舌質は正常あるいは淡・脈が細弱あるいは細数で無力を呈する。
鑑別分析
脾虚・出血・寄生虫などで営血が虚し、重度の栄養不良のために発生する。
治法
疏肝理気・活血通経
方剤例
四逆散 加丹参・ジュウイシ・月季花 月経が発来したのちは人参養栄丸・八珍益母丸などで補益気血する。
B気滞血オの経閉
数か月間の無月経・下腹部が張って痛み圧痛がある・抑うつ感・胸が苦しい・脇痛・いらいら・怒りっぽい・舌辺が紫暗あるいはオ点がある。脈が沈弦
鑑別分析
精神的刺激・生活環境の変化などによって肝気鬱結が生じ、衝任の気血が疏通できなくなったために発生する。
治法
益気活血・調血
聖癒湯加香附子 四物湯加黄耆・人参 (聖癒湯)
C痰湿の経閉
月経量が次第に減少して無月経となり、身体は徐々に肥満し、腰がだるい・浮腫・多量の帯下・胸が苦しい・悪心・動悸・息切れ・味がない・倦怠無力感・顔色が白い・舌苔が白膩・脈が沈濡あるいは細滑。無月経が続くと乳汁分泌をともなうこつがある。
鑑別分析
脾腎陽虚のために痰湿が生じ、痰湿が衝任に停滞して血脈の流通を阻害して発生する。
治法
温腎補脾・去痰利湿・行気通経
鹿角霜飲を大量に使う
鹿角霜飲(鹿角霜5錢,熟地黄8錢,党參3錢,黄耆3錢,韭子1錢,肉桂1錢,菟絲子2錢。)
文献:蘭室秘蔵:婦人門